本研究は、ヘルスリテラシーの向上を通じて患者本位の医療の実現を促進する患者教育・介入プログラムの開発に向けた、理論および概念の整理と基礎的データの収集を目指した。特に、本年度は、1)マスメディア、インターネットの普及など、保健医療に関する情報が氾濫する中、患者が自分の健康や病気に関する情報をどのように収集し、判断し、活用しているのかを明らかにすること、2)健康に関する情報を活用する能力(ヘルスリテラシー)を測定する日本語版の尺度を作成することを目的として、文献レビューおよび実証研究を行った。 まず、本研究の理論枠組みの構築とそれに基づく調査デザイン・質問紙の設計のため、関連する先行の実証研究、理論、モデルなどの文献をレビューし、批判的吟味を行った。特に、本研究の中心概念であるヘルスリテラシーと診察への患者参加については、レビューの結果を総説としてまとめ、投稿中である。 次に、患者の情報収集行動、ヘルスリテラシーの実態を探るため、帝京大学病院内科外来において患者に半構造化面接をおこなった。対象数は男性10名、女性17名である。慢性疾患をもつ患者の主な医療健康情報の情報源や情報収集に対する意向、その過程での困難、健康管理に関する自己効力感などについて回答を得た。 以上に基づき、ヘルスリテラシー尺度項目をふくめ、次年度の調査に用いる質問紙を作成し、同病院の内科外来において、再診の糖尿病患者を対象とし、予備調査を行った。ヘルスリテラシーの尺度は、一定の内的信頼性を示し、糖尿病に関する知識などとも正の関連を示した。来年度は、この結果のさらに詳細な分析に基づき、質問紙策定と調査の実施を行う予定である。
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