本研究では高齢者の転倒防止を目指して、外乱負荷が加わったときのステッピング方略(代償的ステップ動作)に着目した。高齢者の代償的ステップ動作が転倒防止のために、より有効に作用するためには何が必要であるか、また、それはいかなるトレーニングによって増強するかを明らかにすることを目的として、本年度では以下の課題について、データ収集および基礎的な分析を実施した。 1.高齢者における転倒リスクと代償的ステップ動作特性との関係 2.高齢者における代償的ステップと種々の下肢筋機能及び動的バランス能力の関係 まず、高齢者における、ファンクショナルリーチ時に姿勢制御不可となって発生する代償的ステップ動作特性をビデオカメラと足圧力分析器により分析し、転倒リスク得点との関係を検証した。その結果、転倒ハイリスク群の代償ステップ幅は小さく、ステップ高も低く、姿勢の安定性を回復するために数ステップを要し、身体重心位置はステップ足方向に大きく移動した。また、姿勢制御中の足圧中心は左右方向への振幅が大きく動揺が大きかった。さらに代償的ステップ時の足圧力は、転倒ローリスク群が踵から着床後、拇指に直線的に移動するのに対し、転倒ハイリスク群はつま先付近で着床し、着床後は左右方向の動揺が大きかった。次に、代償的ステップ動作特性と種々の下肢筋機能及び動的バランス能力との関係を検証した。その結果、代償的ステップ幅と膝伸展筋力、足関節底屈力との関係が認められた。また、代償的ステップによる足圧中心動揺振幅と足関節底屈力との間に高い関係が認められた。
|