本研究では、高齢者向けに開発したSquare-stepping exercise(SSE)の効果をウォーキングと比較することを目的とした。65-74歳の高齢者63名を実験群(SSE群、32名)、対照群(ウォーキング群、31名)のいずれかに無作為配置した。各群に3ケ月間の運動介入を施した。介入前後に転倒リスクファクタ(脚パワーやバランス、敏しょう性、ウォーキングスピード、柔軟性)、心理的項目(転倒恐怖感や運動の楽しさ、自覚的健康度)を測定し、さらに転倒リスク(介入終了後8ケ月間の転倒回数とつまずき回数)も測定した。介入内容にはスクエアステップあるいはウォーキングを用いた。SSE群は週2回、70分、ウォーキングは週1回、70分の運動教室にそれぞれ参加した。SSEは簡単なパターンからはじめ、徐々に複雑なパターンのエクササイズを積むことで脚パワーや反射能力、神経-筋機能の向上、重心移動の円滑化などの効果を企図した。ウォーキング群には自宅での歩数を増加させるように指示した。介入後、膝伸展パワー、タンデムウォーキングスピード、通常ウォーキングスピード、反応時間、心理的項目が両群において有意に改善した。その改善量はSSE群の方が大きかった。椅子からの立ち上がり回数やファンクショナルリーチ、起立時間は両群ともに有意に改善し、改善量に差はなかった。8ケ月間のフォローアップ中における転倒率(1人年あたりの割合)はSSE群で23.4%、ウォーキング群で33.3%であり、その差は有意でなかった。以上のことから、SSEは転倒リスクファクタ、あるいは転倒リスクに効果をもたらすと見なすことができることから、高齢者の身体的自立度を保持・向上させる健康増進エクササイズとして提案できる。
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