近年、大学ではメンタルヘルスに問題を抱える学生数が増えている。我々は、この要因の一つに、学年の生活習慣の乱れによる身体的基盤の脆弱化(ストレス耐性の低下)が関係しているものと考える。本研究では、メンタルヘルスの問題を持つ学生の生活習慣をアンケート調査し、それに伴って生じると予想される生体内酸化ストレスの増加や、栄養面でのミネラルアンバランスを客観的に評価し、それらが治療経過の中でどのように変化するかを調べることを目的としている。 今回、予備的導入として、健常者の血中酸化ストレス度を測定した。20μlの全血を採血し、pH4.8の酢酸緩衝液に入れサンプル中の水素イオン濃度を安定化させる。次に、酸性培地においてイオン化させた鉄イオンが触媒となるフェントン反応により、酸化過程で形成されたヒドロペルオキシド群が分解され生じたフリーラジカルを呈色反応で計測した。 睡眠不測を感じていない群(3例)で230.3、睡眠不測を感じている群(3例)で平均357.3であった。また、2名について経時的経過を追い、条件は異なるが、23時、3時、6時にそれぞれ酸化ストレス度を測定した。睡眠不足を感じていない1例は、23時:283⇒睡眠⇒3時:251⇒覚醒⇒6時:305、睡眠不測を感じている1例は、23時:371⇒睡眠⇒3時:393⇒睡眠⇒6時:349であった。 以上のような結果は、予備的段階であるが、睡眠が酸化ストレスの軽減に何らかの作用をもつ可能性を示唆している。したがって、睡眠習慣が酸化ストレスに影響を与えるという仮説の一つについては、今後検証を重ねる価値があると考える。さらに、栄養面でのミネラルバランスを加味し、メンタルヘルスと客観的指標を用いた生活習慣との関係について検討を進めていくことは、メンタルヘルス対策における科学的裏付けをもった生活指導につながるものと期待できる。
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