申請者の所属教室は、運動習慣を高める脳内因子の獲得あるいは分子基盤の解明に向けて、自発的に高い走行運動を行うモデルラットSPORTS(Spontaneously Running Tokushima-Shikoku ; Wistar系)の近交系を確立し、これまで脳内モノアミン酸化酵素Aの活性低下がラットの自発運動を誘発していることを明らかにしてきた。そこで本研究では、薬理学的あるいは食品学的に脳内モノアミン酸化酵素Aの阻害することによる運動習慣への影響を解析した。モノアミン酸化酵素A阻害薬であるclorgylineはその末梢あるいは中枢への投与によりラットの自発運動量を有意に増加させた。一方天然ハーブであるセントジョンズワートおよびその中に含まれモノアミン酸化酵素阻害成分として知られているhypericin投与はclorgylineに比べ効果は弱いものの、ラットの自発運動量を増加させた。脳内モノアミン酸化酵素Aを阻害したときの運動習慣を高める脳内分子基盤を検討するため、脳細胞外モノアミン類の濃度上昇を脳灌流法によって解析した。結果、モノアミン酸化酵素Aの阻害により、脳細胞外ノルエピネフリン量は有意に上昇した。この時の脳内ノルエピネフリン受容体の遺伝子発現量には変化は認められなかった。以上の結果より、脳内モノアミン酸化酵素Aの阻害は脳内ノルエピネフリン量の増加を介してラットの自発運動を高めることが明らかとなった。 平成19年度に予定している「モノアミン酸化酵素A阻害による運動習慣増進を介した肥満・2型糖尿病改善効果の解析」における、遺伝子発現の定量解析に備え、肝臓、脂肪組織に発現する糖・脂質代謝酵素、(アディポ)サイトカインや各種転写因子に対するcDNAプローブ(ノザン解析用)、特異的プライマー(定量的リアルタイムRT-PCR法)を作成し、定量条件を確立した。
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