申請者の所属教室は、運動習慣を高める脳内因子の獲得あるいは分子基盤の解明に向けて、自発的に高い走行運動を行うモデルラットSPORTS(Spontaneousy Running Tokushjma-Shikoku;Wistar系)の近交系を確立し、これまで脳内モノアミン酸化酵素Aの活性低下がラットの自発運動を誘発していることを明らかにした。また、この成果を応用して薬理学的あるいは食品学的に脳内モノアミン酸化酵素Aを阻害することがラットの自発運動量を増加することを見出した。本年度の研究では、脳内モノアミン酸化酵素Aの活性低下による自発運動量の増加が血糖値や内臓脂肪量の増加を特徴とする生活習慣病あるいはメタボリックシンドロームに改善効果をもたらすか否かを解析した。脳内モノアミン酸化酵素A活性が低下したラットでは対照ラットに比べ、経口糖負荷試験による血糖値上昇が緩和されており、また血漿中インスリン濃度も低値を示しインスリン感受性の亢進が認められた。また、内臓脂肪量も対照ラットのものに比べ有意に減少しており、食事誘導性の肥満に対しても抵抗効果を示した。また、脳内モノアミン酸化酵素A活性が低下したラットでは筋肉における糖酸化能も亢進しており、個体のエネルギー消費量も上昇傾向を示した。さらに筋肉においては、糖取り込みあるいは脂肪酸化にかかわるタンパク質の発現や活性が亢進していることが明らかとなった。以上の結果より、脳内モノアミン酸化酵素Aの活性阻害は自発運動量を増加させ、糖・脂質代謝を亢進させることから肥満を中心とする代謝疾患の予防や治療に有効である可能性が示唆された。
|