研究概要 |
高脂血症薬剤のフェノフィブラート(以下、フィブラート)は核内受容体であるPPARαを活性化し、脂肪酸のβ酸化を誘導・亢進し、血中中性脂肪を低下させると考えられている。本研究では、食用油中の脂肪酸とフィブラートの脂質低下作用について調べた。 C57BL6雌マウス(8週齢)を用い、脂肪エネルギー比50%の高脂肪食を作成し、サフラワー油群(SO)、魚油群(FO)、魚油へのフィブラート添加量が異なるFO+FF (0.01%)、FO+FF (0.03%)、FO+FF (0.05%)、FO+FF (0.1%)群の計6群を設け、4週間飼育した。飼育後、採血・解剖を行い、血中脂質パラメーターのTG、TC、HDL-Cを、肝機能マーカーのAST、ALTを測定した。SREBP-1cを始めとする肝臓中の脂質代謝関連遺伝子について、Real-Time PCR法を用いて解析した。最終体重量は、SOとFO、FO+FF (0.0l%)、FO+FF (0.03%)で大きな差はなかったが、FO+FF (0.05%)、FO+FF (0.1%)群で低い値を示した。肝臓重量は、魚油またはフィブラート添加群で増加し、フィブラートの濃度が高くなるほど重量が上昇した。肝機能マーカーであるAST, ALTはフィブラート添加群で高かったが、濃度依存性的なものではなかった。魚油またはフィブラート添加群では、血中TG値が有意に低下し、肝臓のTG、TC値も顕著に減少した。SREBP-1活性型タンパク質の発現は、魚油単独群と比較して、0.05,0.1%のフィブラート添加群で減少した。脂肪酸合成関連遺伝子の発現は、魚油またはフィブラート添加群で抑制され、脂肪酸酸化系のAOX mRNAは、濃度依存的に増加した。以上のことから、魚油単独に比べ魚油+フィブラートの添加は、脂肪酸酸化の顕著な亢進を介し、脂質代謝改善において相乗的に関わっていることが示唆された。この結果は、健康補助食品の魚油とフィブラートの服用のバランスを考える上、大変貴重な資料になると考えられる。
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