研究概要 |
【研究背景および目的】本研究は,高齢者を対象に全身持久性運動が下肢筋力向上に及ぼす影響を明らかにする事を目的とした.そのうえで,本年の目的は,高齢者における下記筋力と歩行速度の関連性を明らかにすることであった.【研究方法】本研究の対象者は,邦人65歳以上の高齢者男女68名(年齢73±2歳,身長162.3±4.2cm,体重58.2±4.0kg)であった.全対象者について,下肢筋力および目常身体活動量を測定した.下肢筋力は,膝伸展最大筋力を測定した.日常身体活動水準は,加速度計付歩数計を用いて,一日あたりの歩数および3METs未満に相当する低速度歩行時間,3から6METsに相当する中速度歩行時間および6METs以上に相当する高速度歩行時間を測定した.更に,質間紙調査を用いて,歩行,水泳および自転車駆動の時間を調査した.【研究結果】全対象者を下肢筋力に応じて,下肢筋力確保群(10kg/wt以上)また下肢筋力不足群(10kg/wt未満)ヘグループ化した.グループ間において,歩行時間に有意な差が認められ,下肢筋力確保群は下記筋力不足群に比して歩行時間が有意に長かった(p=0.003).一方,水泳および自転車駆動の時間は,グループ間での有意な差が認められなかった.また,加速度計歩数計による日常身体活動において,下肢筋力確保群は下記筋力不足群に比して,歩数,中高速度歩行時間が有意に大きかった(p<0.05).一方,低速度歩行時間は,有意な群間差が認められなかった.【考察】本研究結果は,我が国の高齢者は,下肢筋力向上のために中高速度での歩行時間の確保に務めるべきであることを示唆する.19年度以降は,この横断的研究で得られた結果を縦断的研究で確認するために,中高速度歩行で構成されるトレーニングブログラムが下肢筋力へ及ぼす効果を明らかにする。
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