血管内皮細胞の活性酸素生成酵素であるNADPHオキシダーゼは、血管組織において主要な活性酵素種の発生源となっている。血管に加わる刺激は、酸化ストレスの生成に大きな影響を及ぼしている。すなわち、運動などの身体活動によたて生じる血流などの変化は、血管を構成している組織に対して活性酸素の産出を促進させている可能性がある。またその一方で、NADPHオキシダーゼの活性化によって発生した活性酸素種は、血管の細胞増殖や遊走、血管新生因子の調節など細胞内情報伝達に重要な役割を果たしていることも明らかにされている。そこで本研究では、マウスにNADPHオキシダーゼを阻害する薬剤を投与したうえで継続的な運動を負荷し、血管組織に及ぼす酸化ストレスの影響について検討した。運動による酸化ストレスの抑制に対して、NADPHオキシダーゼ阻害剤が直接的な影響を示すことはないが、NADPHオキシダーゼ阻害剤の投与は運動時のNO産出の促進させる可能性が示唆された。運動は動脈スティフネスの低下やコンプライアンスの改善につながることから、動脈硬化の発症を抑制することが可能である。身体活動時の血流増加によたて血管内皮細胞から種々な生理活性物質が産出されている。つまり、検討した活性酸素種についても血管の弛緩反応を亢進させている可能性があり、抗動脈硬化因子として血管増殖作用を有する多くの重要な遺伝子発現は、活性酸素種によたて調節を受けていると推察される。
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