研究概要 |
擬似微小重力環境下での骨萎縮、特に骨微細構造の劣化に対し、運動負荷や薬物療法がどのような影響を及ぼすかを検討するため以下の研究を行った。実験1では、尾部懸垂解除後の異なる運動形式が骨梁構造劣化の回復に及ぼす影響を検討した。5週齢の雄性ラットに2週間の尾部懸垂を行い、その後,5週間の安静回復,ジャンプ運動およびランニング運動を実施した。実験終了後,大腿骨の骨密度をDXA装置により測定した。次いで,大腿骨遠位骨幹端領域の海綿骨微細構造および骨幹部の幾何学的特性を,マイクロCTにより解析した。その結果、尾部懸垂後に開始した5週間の運動が骨量、骨梁の幅、数および連結性の低下を抑制できることが明らかになった。特に、ジャンプ運動のようなハイインパクトまたは低反復運動の方が,ランニング運動よりも尾部懸垂後の骨萎縮の回復に有効である可能性が示唆された。実験2では、運動負荷と骨粗髭症治療薬による骨微細構造変化の相違および相乗効果の有無を検討した。8週齢の雄性ラットに2週間の尾部懸垂を行い、その後、4週間の安静回復、アレンドロネート投与(ALN)、副甲状腺ホルモン投与(PTH)およびジャンプ運動を実施した。実験終了後,大腿骨の骨密度をDXA装置により測定した。次いで,大腿骨遠位二次海綿骨領域および骨幹部の幾何学的特性を、マイクロCTにより解析した。3点支持の破断試験を行って骨強度を測定した。その結果、骨梁構造劣化の回復に対するジャンプ運動とPTH投与は、主として骨梁幅の増加に寄与しているのに対して、ALNは骨梁数の増加に寄与していることが示された。また、皮質骨の幾何学的特性と骨強度はジャンプ運動により回復したが、ALNとPTHの効果は少ないことが示された。以上の結果より、PTHとジャンプ運動はALNと異なった機序で骨梁構造の劣化を回復することが考えられ、相乗効果が期待される。
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