研究概要 |
本研究は、高齢者や脊髄損傷者を対象とした、生活習慣病を予防・改善するための有酸素運動法を開発することを目的とした。この方法として皮膚冷却刺激を用い、この刺激がある場合に運動中の酸素摂取量が増大するという仮説を検討することを目的とした。平成18年度は、下肢の麻疹を有する脊髄損傷者(PSCI,n=5)が対象であった。各被験者に、換気性作業閾値の1.1倍に相当する腕クランキング運動(51±22watts,mean±SD)を6分間行わせた。運動中は、アイスパックを用いて麻痺下肢に断続的に6回の冷却刺激を与えた。1回の刺激時間は30秒であり、刺激後は30秒の非冷却期をおいた。また、各被験者は冷却刺激を行わない腕運動も行った。これら2種類の運動は順不同で別々の日に行った。運動中の酸素摂取量(VO_2)の変化を指数近似式によりフィッティングし、各変数の運動開始直前からの増加量(Amp)、増加開始までの時間遅れ(Td)、時定数(Tc)、および平均反応時間(MRT,Td+Tc)を求め、冷却刺激有の場合(C)と無しの場合(N)で比較した。指数近似解析により得られた各パラメーターは以下の通りである。 C条件 Amp:789±337ml・min^<-1>,Td:7±8sec,Tb:53±24sec,MRT:59±17sec N条件 Amp:801±308ml・min^<-1>,Td:1±14sec,Tc:56±26sec,MRT:57±14sec 条件間で有意な差は認められなかった。このため、麻痺領域への皮膚冷却刺激は酸素摂取量を高める効果が少ないことが示唆された。
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