研究概要 |
快適な衣生活のみならず良好な労働環境の実現するためには,身体への熱ストレスを低減して生体機能を維持しなければならない.本研究は,熱ストレスの原因となるヒトの発汗挙動,特に,身体部位における発汗挙動とそれが温熱的快適性に及ぼす影響を明らかとして,温熱的に快適な衣生活環境や,高い作業能率を維持する着衣システムを考案して,より安全で良い労働環境の実現に,貢献しようとするものである. 研究代表者は,平成18年度より,所属する研究機関を移動した.本研究目的を達成するために,研究初年度(平成18年度)は,ヒトの非定常の発汗挙動を把握するために,局所発汗量計測システムを作製した.本装置による局所発汗量は,発汗カプセル中を通過する窒素ガス流量と,その絶対湿度の変化により求められる仕組みである.作製した計測システムを用いて,人体の発汗状態を広域に渡り再現する模擬皮膚を用いたモデル実験を行い,その測定精度も検証した.模擬皮膚からの物質伝達には熱伝達との類似則が成り立つと仮定した場合,物質流東の理論値と本開発装置による計測値は,1×10^<-5>から3×10^<-4>kg/m^<-2>sの広い発汗量域において,よく一致した.このことから,システム中を流れる窒素ガスは,発汗の発現画上に,均一かつ確実に供給されていることが確認された.また,模擬皮膚からの発汗量と本装置による計測値も,非常によく一致した.以上のことから,開発した本装置による局所発汗量の計測が,被験者実験に用いることもできることが示された.そこで,研究最終年度(平成19年度)では,開発した発汗量計測システムを用いて,複数の局所発汗量を計測する.その結果をもとに,局所発汗量が全身の温熱的快音性に及ぼす影響について検討するための被験者実験を行う予定である.
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