本研究は、家電器具など家事のための道具の導入による、主婦の役割意識の変化の実態を明らかにすることを目的としている。 日本の家族の近代化を検討する際には、制度面だけでなく家庭で使用された生活財、つまり装置面の発達を理解しなければならない。なかでも家庭電化製品の使用は、近代以降の家族生活の前提条件であり、現代に至る家族関係の形成過程を説明する要素のひとつだといえる。本研究では、主婦の家事に対する意識が、家事のための道具の変化とともに、どのように変化したかを具体的に検証する。 平成18年度は、まず家事道具に関する資料収集および分析を行った。新しい家事道具が受容されていく過程を、(1)婦人雑誌・家事(家庭科)教科書、(2)家庭電化関係の書籍・雑誌、(3)製造・販売された製品のパンフレット・メーカーの社史、から整理した。なかでも炊事、掃除、洗濯に関する道具について、大正期から現代までを5期にわけ、その内容と普及について分析した。 さらに、あわせて6名の高齢者(68歳から75歳までの女性)を対象として、1名1時間半〜2時間程度の聞き取り調査を行った。今年度の調査は、すべて終戦以前(昭和6年〜13年)に生まれた者を対象としたため、家電製品が導入される以前と以後の家事の変化、家電製品導入の契機、ライフステージ別の家事の実態と使用道具、家事技能の伝承実態の変化等を中心に調査結果の分析を行い、家事意識および主婦の役割意識の変遷という観点から考察を行った。
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