明治20年代からおよそ昭和20年代までに仙台地方で盛んに生産された染物の特産品に常盤紺形染めがあったが、戦後急速に衰退して、注染による浴衣と手拭いの生産へと移行した。常盤紺形染めは、絣、縞などの織文様や絞り染め文様を型染で表現した木綿藍染めであるが、現在、当時の製品は殆ど失われてしまった。その型紙の一部は、仙台市博物館や数軒の染物屋に保存されているが、百年近く経過したものもあり、劣化が進み保存状態は良くない。今後も劣化が進むことは確実であり、常盤紺型の型紙自体の保存や、文様の保存方法を検討することは、仙台地方の文化財保存の観点からも極めて重要である。 平成18年度は、これまでにデジタルデータ化していた民間所蔵常盤紺型499枚に、今回新たに収集した36枚を加えて、常盤紺型の文様名の特定を行い、型紙データを整理・分類・修復・保存して、「仙台型染資料集1」(151頁、型紙535枚)を作成した。 さらに、浴衣・手拭い型紙については186枚の型紙の電子保存を行った。これらは型紙が大判なため、デジタルカメラによる2〜4分割撮影を行い、最小限の画像処理によるデジタルデーダを作成した。型紙に破損・欠損箇所のあるものは47.8%と約半数を占め、それらについては文様修復も試みた。型紙の種類は、「名入れ型紙」が36.6%、「名入れ以外の型紙」が63.4%であった。また、特定できないものもあったが「名入れ型紙」の多くが手拭い用として作られたものであることが推測でき、宿泊施設関係のものと思われる浴衣用型紙も見られた。一方で、「名入れ以外の型紙」の殆どが浴衣用であった。また、型紙の文様を抽出したところ、割付文様97枚、文字68枚、植物文様が66枚、自然文様24枚、器物文様12枚、動物文様10枚、その他の文様が41枚でみられた。現在、その文様の整理・分類を行っているが、その資料集の作成も検討している。
|