明治20年代からおよそ昭和20年代までに仙台地方で生産された染物である常盤紺形染と常盤紺形染以降に生産された浴衣・手拭いの型紙文様の収集を行い、その文様のデジタル処理(デジタルデータ化)による収録と電子修復を行った。 平成20年度は、これまでにデジタル処理・収録していた仙台市歴史民俗資料館所蔵の常盤紺形染用型紙(以下常盤紺型とする)31枚の文様名の特定とデータの整理・分類を行い、文様の破損箇所については電子修復を行った。また、今回、東北歴史博物館所蔵常盤紺型34枚と、民間(旧荘司染工場)所蔵の常盤紺型16枚について、新しく型紙文様の収録・整理と電子保存を行った。また、現存する昭和初期頃の常盤紺形染物と、仙台在中の染色作家や染色工場が復刻・製作している現代の常盤紺型染物について調査を行った。さらに、常盤紺形染以降に仙台地方で生産されていた浴衣染見本を加えて、『仙台型紙資料集III』(111頁、資料掲載数265枚)を作成した。 一方、浴衣・手拭いの染めに用いられた注染用型紙226枚について文様のデジタルデータを作成した。これまでに調査・電子保存を行った注染用型紙では、花鳥風月をモチーフとした文様が多く、女性用浴衣製作に用いられたと考えられる型紙が多数見られたが、今年度調査した型紙では「名入れ型紙」が多数を占めた。「名入れ型紙」は営業目的など宣伝用に使用・頒布する手拭いや浴衣を染色するために用いられた型紙であり、これまでに調査した型紙文様と比べて、文字文様が多く、簡素なデザイン構成のものが多く見られた。
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