衣服の洗浄機構の解明に向けて新たな知見を付け加えることを目的として、本年度も引き続き、洗剤の主成分である陰イオン界面活性剤の水溶液表面における吸着状態の構造解析を行った。 陰イオン界面活性剤としては、衣料用洗剤として使われているp-n-デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS-C10)とp-n-ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS-C12)を用い、濃度を変えた水溶液の表面の赤外外部反射スペクトルの測定を室温で行った。そして、CH_2の伸縮振動バンドの波数と強度から、界面活性剤の炭化水素鎖の状態の考察を行った。 LAS-C10の場合、濃度が0.5mMの時は、CH_2逆対称伸縮振動バンドの波数は、2926cm^<-1>となり、また、濃度が1mM以上の時は、2922cm^<-1>でほぼ一定となった。この波数シフトは、濃度が0.5mMと1mMの間で、LAS-C10分子の炭化水素鎖のコンフォメーションが、ゴーシュからトランスに変化する傾向があり、また1mM以上の濃度では、コンフォメーションが変化しないことを示している。また、この変化が起きている濃度は、LAS-C10のcmcの値(4mM)よりも低い濃度範囲であった。さらにこれらのバンドの波数に加えてその強度の値も、前年度研究を行ったSDSの結果と近いものであり、水面における両者の状態が似ていることが予想される。 一方LAS-C12の場合は、測定可能な濃度範囲では際立った波数変化を見せず、2926cm^<-1>以上で一定であり、分子構造に大きな変化が無く、またLAS-C10とは異なる状態にあることが示唆された。
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