被服の洗浄機構に新たな知見を付け加えることを目的として、本年度も引き続き、洗剤の主成分である陰イオン界面活性剤のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液表面における吸着状態の構造解析を行った。p-n-オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS-C8)を用い、濃度を変えた水溶液の表面の赤外外部反射スペクトルの測定を室温で行った。そして、メチレンの伸縮振動バンドの波数と強度から、界面活性剤の炭化水素鎖の状態の考察を行った。 0812079EA002 その結果、濃度が5mMの時は、メチレン逆対称伸縮振動バンドの波数は、2928cm-1となり、また、濃度が10mM以上の時は、2922cm-1でほぼ一定となった。この波数シフトは、濃度が5mMと10mMの間で、LAS-C8分子の炭化水素鎖のコンフォメーションが、ゴーシュからトランスに変化する傾向があり、また10mM以上の濃度では、コンフォメーションが変化しないことを示している。以上の結果は、昨年度の結果との比較から明らかなように、LAS-C12よりもLAS-C10の傾向に近いものであり、水溶液の表面の吸着状態は、炭化水素鎖の長さに大きく依存するものであることが明らかとなった。 また、これらに関連して、ステアリン酸亜鉛ラングミュア膜の表面圧緩和過程における分子構造変化のタイムスケールの解析も合わせて行い、タイムスケールの異なる2つの機構が存在することが、赤外外部反射スペクトルと表面膜圧の測定から示唆された。
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