本年度の研究によって以下が明らかになった。 第1に、文献調査から、日本の「ファミリー・フレンドリー」企業では、労働者(特に男性正社員)の長時間労働を変える効力を十分にもっていない傾向が見られた。例えば、労働者が抱える多数の仕事を、労働者の自己責任によって短時間で終わらせるよう要請する企業も存在していた。 第2に、「ファミリー・フレンドリー」企業で働く男性社員であっても、彼らは育児休業ではなく、有給休暇の消化や、査定に影響を及ぼさない休暇(出産休暇等)などによって、出産時の育児に関わっている傾向がうかがえた。 第3に、「ファミリー・フレンドリー」企業においても、育児休業をとった社員や短時間勤務制度を選択した社員の、企業内での査定は、フルタイムで残業した社員よりも低い傾向にあった。また「ファミリー・フレンドリー」企業の中には、この点について何も問題を感じていないものが存在した。 上記から、「日本のファミリー・フレンドリー」企業に関する研究では、(1)労働時間の短縮のための実践的なプログラムの策定と実施、(2)育児休業などの取得による賃金の保障、(3)育児休業取得後の労働者の査定に関する「公正」概念の再検討、が必要であることがわかった。特に(3)については、企業の判断に任せることが真に妥当であるかどうかを議論する段階にある、と考えられる。
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