本年度の研究の目的は、家族的責任を伴う従業員を支援する企業は、実際に従業員に対してどのような配慮と支援をおこなっており、また、それらは従業員と家族の福祉やジェンダー平等の視点から、どのような課題を含んでいるのかを、次世代育成支援に積極的な企業に対する質問紙調査から明らかにすることであった。具体的には、次世代育成支援に積極的な企業に対して、次世代育成支援を、計画から遂行までの状況と、現在抱えている問題点についてたずねた。 本年度は、主に質問項目の単純集計と属性との関連を中心に考察したが、その結果、主には次の点が明らかになった。1.対象企業は社会的責任に対する意識と、従業員の子育てを支援したいという気持ちから、次世代育成支援に取り組んでいること、2.次世代育成支援において、特に育児休業の取得率は他の一般企業と比べて高く、父親が長期的に育児休業をとった企業も存在していること、3.次世代育成支援を進める上で特に大企業が課題を抱えていること。この3.の課題については、従業員の労働環境を改善するためにも、自社の両立支援や子育て支援の推進の成果を、従業員はもとより、求職希望者や社会一般に広く公開し、従業員との対話を進めることが必要であると考える。 本研究は、協力企業が少なかったために、限定的な結果となったことは否めない。このため、今後はこの成果から得られた成果を、より幅広い企業・従業員調査へとつなげていき、本研究で得られた知見の一般化を試みたい。
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