「なかよし」という関係は肯定的な側面で捉えられることが多く、葛藤的な側面を見落とされがちである。この「なかよし」ということに含まれる両義性を問いながら保育の場における幼児理解や遊びの援助に関する示唆を得ることが本研究の目的であった。今年度は特に、新入園児である年少児における「なかよし」の形成プロセスを模倣の観点から見ていくことを中心に研究および研究発表をおこなった。 幼稚園において子ども同士の遊び場面を中心にビデオカメラを用いて週に1回観察を行い、3歳児クラスの子ども同士の間に生じた模倣に焦点化したエピソードの分析を行った。その結果、大人の文化に子どもが参入していく際に大きな意味をもつ「模倣」は同年齢の子ども同士が遊んでいるときにも見ることができた。また、そこで見られた模倣の様相の変化は、身体的な動きに巻き込まれるような同調的な動きの模倣から、特定の他者をおいかけて真似するようなやや意図的な模倣、さらには相手の意図を理解した、互いにまなざしをおくり真似しあう模倣へと変化していることが観察された。 遊びとして魅力的な動きは模倣を誘う働きを示し、それは模倣しあう仲間関係のはじまるきっかけであった。子ども同士のあいだでは、大人と子どもとの間ほどの明確なかたちでの力の差、文化の存在はみられず、仲間同士が模倣しあうことは、Corsaroの指摘する仲間文化の形成と深く関っていた。しかし、観察の中で、模倣が生じない関係、さらには模倣を拒む関係も見られ、力関係のはじまりと見てとることもできたことから、「なかよし」の葛藤的側面と模倣は深くかかわっていることが推察された。 今後、「なかよし」関係の形成プロセスの葛藤的側面を模倣を通してさらに検討していきたい。
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