親教育の実践例として注目できるのがカナダの「ノーバディーズ・パーフェクト」や「共感の根」プログラムである。今年度は後者に注目するが、これは学校教育の一環として実践されている。日本においても家庭科教諭により親教育の実践が一部で実施されているが、ゆとりのないカリキュラムに取り入れられる可能性は限られている。そこで注目するのが、2003年度より児童館事業として実践されている「中高生と赤ちゃんのふれあい事業」である。今年度は、当該事業のセミナーに参加し、全国から参加された児童館担当者から実践報告を聞き、実践に際してのノウハウや事例集を入手し、さらには今後の課題を聞きくことができ、参加した中高生の感想なども聞くことができた。 着実に実績をあげており、期待できる「中高生と赤ちゃんのふれあい事業」が、なかなか幅広く全国展開されない理由を探るべく、全国の児童館の実態把握を試みるために政令指定都市の児童館を中心に視察を行った。得られた概要としては、横浜市や福岡市には児童館はなく、横浜市では小学生を対象に学童保育と類似した全児童対策事業を、福岡市では学校併設で学童保育事業が実施されていた。京都市には106館存在し、乳幼児の親子の子育て支援と放課後児童健全育成事業(いわゆる学童保育)とを一元化して実施されている。広島市では児童館は102館あるものの、その機能は学童保育のみで午後のみ開館されていた。大阪市では財政難から児童館が廃止され、横浜市と同様の全児童対策事業のみ実施されていた。児童福祉法において児童館の定義はあるものの、設備基準等が明確でないためその機能は、自治体によって非常に大きな違いがあることが浮かび上がってきた。 こうした現状を踏まえると、「中高生と赤ちゃんのふれあい事業」という親教育実践の場を、現在のように児童館に限定すると、全国展開に際しては大きな問題となることが分かった。そこで、日本における実践を普及させるためには、例えば現在特別保育事業の1つとして全国展開されている地域子育て支援センター等も視野に入れて、親教育の実践可能性を探ることが重要ではないかと考えられる。
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