これまでに効果的な親教育の理念とその実践に関して研究をすすめてきたが、研究の総括を行う今年度は地域子育て支援が発達したカナダのなかでも、保育・教育の制度が日本に近いといわれているブリティッシュ・コロンビア州を訪問し、実践の現状把握を試みた。地域子育て支援が充実している背景として指摘できることを簡潔に言えば、子育て支援の拠点が地域に公、私、NPOなど大規模なものから個人のものまでが点在していることが挙げられる。こうしてネットワークの綱目が細かく整備されたハード面のうえに、ノーバディーズ・パーフェクトやトリプルPなどの親支援・子育て支援プログラムのソフト面がニーズに応じて組み合わされ実践され効果をあげているといえる。 日本における実践可能性を検討したときに、子育て支援の拠点となっているのは幼稚園、保育園、支援センターなど施設型のものに偏る傾向がみられた。しかし、つどいの広場事業の設置数も増加しており、大学も含めた多様な場での親子の居場所作り、すなわちハード面の充実が期待できる。乳幼児の親および大学生を対象とした調査を実施したところ、求めている支援の内実は経済的支援などの物理的なものの他に、親同士のつながりをはぐくむサポートが求められていた。子育て支援におけるソフト面の充実が期待されているが、ここで重要なポイントは指導者から何かを教えてもらうという狭義な「親教育」へのニーズは、情報があふれる現在求められていない。つまり、トップダウンの親が受身になる支援ではなく、「つながり」「協働」を意識した子育て支援への価値観の転換を堅実に実践していくことが、今後の日本における子育て支援のソフト面を充実させ、子育て支援全般の基盤を構築するために肝要だといえる。
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