本年度は、調理過程におけるテクスチャーのコントロールが重要でありながら困難である野菜のうち「ニンジン」をサンプルとして用い、これに含まれるペクチン質の量と組成、化学構造と組織構造やテクスチャーの関係に着目し、様々な加熱調理による変化を比較することを目的に研究をおこなった。 <方法>ニンジンを、A:過熱水蒸気(ウォーターオーブン「ヘルシオ」、シャープ製)、B:圧力鍋(120℃)、C:ゆで(100℃)、D:保温鍋(「シャトルシェフ」、サーモス(日本酵素)製)等の調理方法で加熱し、ペクチン質抽出用サンプルに最適な加熱条件を検討した。 <結果>ペクチン質抽出用サンプルは、1本のニンジンでA〜D全ての加熱サンプルを得る必要があるためこれまでのニンジンを用いた研究実績と新たな予備実験によりサンプルサイズを直径10mm×厚さ5mmの円盤とした。各加熱法の最適加熱条件はCで通常食するに適当な硬さを基準にとして決定した。基準加熱条件Cは、蒸留水300ml中にサンプル10個を投入して30分加熱をおこなうこととした(この時の硬さは約3×10^5N/m^2)。Cと回様に蒸留水300ml中でサンプル10個を加熱し沸騰後、Bは2分加熱し10分圧力を保持、Dは20分保温すると基準条件とほぼ同様の硬さとなった。Aは中心温度がおおよそ100℃になるまで加熱との目安を得たが、サンプルサイズが通常の料理より小さく加熱条件の設定が難しく確定には至らなかった。加熱後の色の変化は、肉眼観察・色差計測定ともに加熱条件による差はほとんど見られなかった。研究再開後に決定した条件により加熱した各サンプルのペクチン質の抽出・分析を行う予定である。
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