ニンジン、ジャガイモを用いて、これらに含まれるペクチン質の量と性質とテクスチャーの関係に着目し、様々な加熱調理による変化を比較することを目的とした。 <方法>西洋ニンジンおよび男爵イモをA:過熱水蒸気(ウォーターオーブン「ヘルシオ」、シャープ製)、B:圧力鍋(120℃)、C:ゆで(100℃)、D:保温鍋(「シャトルシェフ」、サーモス(日本酵素)製)等の調理方法で加熱し、破断強度解析およびペクチン質の抽出・定量を行った。 <結果>昨年度サンプルの定量結果が不調であったため、ペクチン抽出用の試料サイズ・加熱条件の再検討をおこない、試料サイズを直径10mm・厚さ10mmに改め、Cで食するに適切な硬さのサンプルの破断応力を基準として、他の方法での調理条件を決定した。ニンジン、ジャガイモともに加熱時間はB<D<A<Cであったが、Dは火から下ろした後の柔らかくなるまでの保温時間を含む全調理時間は最も長くなった。加熱後の試料は破断応力(硬さ)がほぼ同じになるよう加熱しても破断歪率は各加熱方法により異なった。Aは他の方法と大きく異なり、表面は硬いが内部は柔らかくなっていることが示された。特にAのジャガイモは、外はサクサク、中はモッチリとした食感を生み出していた。また、Bは煮崩れやすく、Dは煮崩れがほとんどなかった。生およびA、B、C、Dの加熱サンプルからペクチンを抽出し、その総量を比較したところ、Aは比較的調理による損失が少なく、最も調理による損失が多かったのはBであった。DはCよりやや損失が少ない程度であった。すなわち、硬さ(破断応力)を基準とした軟化の度合いは同程度であっても、加熱方法によりトータルの食感には差異があり、また野菜の軟化と関係が深いとされるペクチン質の損失の度合いも異なることが分かった。以上のように省エネルギー、省時間、調理後の独特の食感(おいしさ)等様々な観点からの各調理法の特徴を分析し、生かすことによってより品質の良い料理を提供することに繋がると考えられる。
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