食餌性タンパク質の消化性および腸管吸収性と食物アレルギー誘発性との関連を明らかにすることを目的として、卵白の主要アレルゲンであるオボアルブミン(OVA)とリゾチーム(LY)の消化性および腸管吸収性について調べ、比較した。 OVAおよびLYのin vitroでの消化性を解析した結果、完全には分解されず、未分解の状態で残存した。また、20mgのOVA、LYをマウスに胃内投与し、30分後に門脈血および消化管内容物を採取した。消化管内容物中のOVAおよびLYはイムノブロットにより検出し、小腸内の残存量を阻害ELISA法で定量した。その結果、OVAは5匹中3匹、LYは全てのマウスの小腸内から検出され、その残存量についてもOVAは0.05-3.73mgだったのに対してLYは0.10-0.98mgと差が見られ、消化性が異なっていた。また、門脈血清中の各タンパク質をイムノブロットにより検出した結果、OVAは5匹中2匹、LYは全てのマウスから検出され、吸収性についても差が見られた。さらに、麻酔下で開腹したマウスの十二指腸内に各タンパク質溶液を直接投与後(4mg/mouse)、0-10分後に採取した門脈血中の各タンパク質を定量し、吸収時問、吸収量を比較した。その結果、OVAは十二指腸投与5分後に最も血中濃度が上昇したが、LYは5-10分にかけて血中から検出された。しかし吸収量に差はなかった。 今年度の研究成果から、タンパク質によって消化性および吸収性が異なることが明らかとなり、この差がアレルギー誘発性に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。さらに、これらのタンパク質の加工・調理にともなう消化性および吸収性の変化を調べる上での基盤となるデータが得られた。
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