1 食用昆虫の採取と試料調製 (1)長野県内に生息するクロスズメバチ幼虫、キイロスズメバチ幼虫および天竜川に生息するトビケラ幼虫を採取した。蚕のサナギは養蚕家より入手し、イナゴは水田にて、カミキリ虫幼虫は雑木林にて採取した。試料は沸騰水浴中で間接加熱を行い、凍結乾燥後、粉末化した。 2 食用昆虫の採取経験調査 (1)長野県内の短期大学生の74%に食用昆虫の摂取経験があり、内訳は、トビケラ幼虫51%、イナゴ90%であった。 3 脂質の抽出と分析 (1)試料中の脂質含量はクロスズメバチ幼虫8.1g/100g、キイロスズメバチ幼虫3.9g/100g、トビケラ幼虫4.9g/100g、蚕のサナギ15.5g/100g、イナゴ1.3g/100g、カミキリ虫幼虫9.0g/100gだった。 (2)試料中のコレステロール含量はクロスズメバチ幼虫65mg/100g、キイロスズメバチ幼虫19mg/100g、トビケラ幼虫16mg/100g、蚕のサナギ127mg/100g、イナゴ58mg/100g、カミキリ虫幼虫23mg/100gだった。 (3)クロスズメバチ幼虫およびキイロスズメバチ幼虫の構成脂肪酸は、パルミチン酸(34〜37%)とオレイン酸(36〜40%)が中心だった。 (4)トビケラ幼虫には、オレイン酸(59.1%)および未知の特徴的な脂肪酸(12.6%)が含まれていた。 (5)イナゴと蚕のサナギにはn-3系脂肪酸であるα-リノレン酸(イナゴ29%、蚕のサナギ36%)が多く含まれていた。 (6)カミキリ虫幼虫には、オレイン酸(59.1%)が多く含まれていた。 分析した試料の脂質やコレステロールA量は昆虫によって大きく異なった。これは、昆虫が普段エサとしているものに影響を受けてている可能性が示唆された。例として、同じスズメバチ幼虫でもクロスズメバチ幼虫とキイロスズメバチ幼虫ではコレステロール含量に大きな差がみられる。
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