研究概要 |
日本では食生活における自己管理能力の性差が大きく,特に男性の食生活に対する関心をより引き出すための教育改革が必要であり,これまで小中高の学校家庭科教育で行われてきた食物分野の教育の改革の可能性について研究を行った。 本研究はH18・H19年度の2年間の研究計画に基づくものであり,H18年度では,学校家庭科教育の食物分野における歴史と実際の教育問題における文献調査,家庭科男女共修以降に学校家庭科教育を受けてきた男子大学生を対象とした食生活に関するアンケート調査,調理科学実験の要素を取り入れた場合の教育効果についての実践的研究の3方向からのアプローチを試みた。その結果,調理実習内容に関して,戦後生活の変化に合わせた内容の質的見直しは行われておらず,小中における実習内容のダブリが認められたこと,男女共修に伴い家庭科食物分野にかけられる時間が十分ではないことから大幅な内容削減と技術的レベルダウンが図られたことが問題点として考えられた。20代の男子大学生を対象としたアンケート調査では,小中高の学校家庭科教育における調理実習について,現在の生活に役立っていると答えた者は約20%と少なく,逆に実生活に全く役立っていないと答えた者は17%おり,実生活への応用を主眼とした学校家庭科教育における調理実習の内容見直しの必要性を示唆する結果と推察された。調理科学実験の導入については,公立中学校2年生を対象に実際に実験授業を行った。実験後の確認テストから,ある程度調理経験のある学生では調理を科学的な目で見ることができるようになり,調理への関心がより高まる効果のあることが明らかになった。しかし一方,調理経験のほとんどない学生においては理解が追いつかないためか調理実習以上の効果は認められなかった。 H19年度はこれらの結果を踏まえ,男子の食の見方を変えるキーポイントについてさらに研究を深めていく予定である。
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