高血圧や糖尿病など複数の生活習慣病を併発するメタボリックシンドロームが大きな社会問題となっている。多くの生活習慣病が酸化ストレスや血管新生によって悪化することから、本研究では抗酸化作用及び血管新生抑制作用を有する食品成分によるメタボリックシンドローム発症予防の可能性を検討した。 糖尿病や動脈硬化では、活性酸素や酸化LDLが病態に関与している。従って、抗酸化成分が血管新生抑制作用を有していれば、メタボリックシンドロームの進行を予防できる可能性が高い。そこで、抗酸化成分の血管新生抑制作用を検討し、新たにカルノシン酸に血管新生抑制作用を見出した。また、本成分による糖尿病合併症予防効果について検討したところ、新規作用機序の可性が示唆された。 ビタミン類の生活習慣病予防効果について近年見直されてきていることから、ビタミンK類の血管新生抑制作用について検討した。その結果、ビタミンK3及びその誘導体に血管新生抑制作用を見出した。ビタミンK1は動脈硬化を悪化させる可能性が示唆されていることから、他のビタミンK類に血管新生抑制作用を見出したことは、ビタミンKの利用に関して重要な知見となる。 メタボリックシンドローム予防の一つとして、過度の肥満を防ぐことが重要である。肥満予防に血管新生抑制作用を有する茶カテキンが有効であることが知られているが、その作用機序には未だ不明な点が多い。茶カテキンの抗肥満作用として、脂肪組織に多い幹細胞や脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化にも影響を与えている可能性がある。そこで、マウス胚性幹細胞(ES細胞)を用いて検討した結果、茶カテキン存在下で幹細胞から分化した脂肪細胞は脂肪代謝が高まっている可能性が遺伝子発現解析から示唆された。 以上、抗酸化作用と血管新生抑制作用を有する食品成分はメタボリックシンドローム発症予防に有用である可能性が示唆された。
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