研究概要 |
近年、アレルギー患者が急増し、大きな社会問題となっている。現在のアレルギー対策は医師による抗アレルギー薬の投与が中心だが、これらの医療品では副作用など患者に対する負担が大きい。そのため、日常的に摂取でき、体質改善といった根本治療に繋がる可能性のある食品の抗アレルギー効果に着目することは、アレルギー対策として有効な手段の1つである。本研究は、食品由来の抗アレルギー成分の探索の一環として、温州ミカンおよび温州ミカンに含まれる特徴的なフラボノイドの肥満細胞脱顆粒抑制メカニズムを明らかにすることを目的とした。温州ミカンの抗アレルギー活性を、ラット好塩基球性白血病細胞株RBL-2H3を用いて、β-ヘキソサミニダーゼ(酵素活性測定法)およびヒスタミン(HPLC on-column法)の遊離からIgE依存性脱顆粒度を指標に測定した。ポジティブコントロールとしてwortmannin(WM,25μM)を用いた。温州みかんパウダー(富士製粉製)の50%メタノール抽出物(MEC)8mg/mlの添加により、β-ヘキソサミニダーゼおよびヒスタミンの遊離が抑制された。MEC含有フラボノイドの活性比較では、アグリコンであるノビレチンおよびヘスペレチンは高い活性を示したが、配糖体であるヘスペリジンは活性を示さなかった。MEC含有フラボノイドの脱顆粒抑制時における細胞内シグナル伝達機構を解明するため、RBL-2H3の細胞内リン酸化タンパク質を測定した。WM、ノビレチンおよびヘスペレチン添加ではPI3キナーゼ下流のAktのリン酸化が抑制され、ヘスペリジン添加では抑制されなかった。このことからノビレチンおよびヘスペレチンはWMと同様のメカニズムで脱顆粒を抑制することが示唆された。
|