研究概要 |
本年度は、副甲状腺ホルモン(PTH)分泌に直接影響するカルシウム(Ca)を飼料に添加し、高リン(P)食摂取時の骨代謝の変化を検討すると共に、腎石灰化と腎機能の低下に対する影響についても検討した。被験動物として4週齢Wistar系雄ラットを用いた。飼料はAIN-93G飼料組成に基づき、正常食(P:0.3%,Ca:0.5%)、高P食(P:1.5%,Ca:0.5%)、高Ca食(P:0.3%,Ca:1.0%)、高P高Ca食(P:1.5%,Ca:1.0%)を作成した。1週間の予備飼育の後、3週間の飼育観察を行った。高P食投与により、血清中Ca濃度は有意に低値を示し、血清中P濃度、血清中PTH濃度、骨形成マーカーである血清中オステオカルシン濃度、骨吸収マーカーである尿中CTx排泄量、腎臓中Ca濃度、尿中アルブミン排泄量は有意に高値を示した。Ca投与により、高P食投与時の血清中P、PTH、オステオカルシン濃度の増加は完全に抑制されたが、血清中Ca濃度、尿中CTx、アルブミン排泄量は正常食投与群の値まで回復せず、腎臓中Ca濃度ではCa投与の影響はみられなかった。以上の結果から、高P食投与により引き起こされる高回転型の骨代謝と腎機能低下に対してCa投与はある程度の改善効果を示した。しかし、Ca投与により高P食摂取時の血清中PTH濃度は低下したが、骨吸収は完全に抑制されなかったことから、高P食摂取時の骨吸収の亢進はPTH分泌亢進以外の因子も関与することが示唆された。また、腎臓へのミネラル沈着に対して効果を示さなかった。
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