研究課題
今年度は、塩素の経口摂取がタンパク抗原特異的T細胞の反応に及ぼす影響を、昨年度に引き続きマウスを用いて研究した。また一方で、実際の浄水場からの距離と水道水中の残留塩素濃度およびpHとの相関を調べた。更に調査研究により、浄水場からの距離とアレルギー疾患の発症率を調べた。塩素を0%または0.1%含んだ蒸留水を8週間マウスに自由摂取させ、その間、卵白アルブミン(OVA)をコレラトキシンアジュバントと共に3回経口免疫した後、脾臓を摘出した。そしてこれら臓器から精製したT細胞におけるOVA特異的な増殖反応を、テトラゾリウム塩(MTT)法により測定した。塩素を投与したマウスの脾臓T細胞のOVA特異的な増殖反応は、塩素を投与しなかったマウスに比べて有意に高い値を示した。また、浄水場からの距離が長くなるにしたがって、水道水中の遊離残留塩素および結合残留塩素は低くなり、pHは高くなる傾向がみられた。次に、浄水場からの距離と食物アレルギーの関係を調べた。20代女性を対象にアンケート調査を行い、浄水場から10km未満、10km以上20km未満、および20km以上の地域に住んでいる女性における、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の発症率を調べた。その結果、食物アレルギーの症状を呈したことがあると答えた女性は、浄水場から近い順に、11.1%、5.6%、0%であり、一方、アトピー性皮膚炎の症状を呈したことがあるであると答えた女性は、30.6%、11.1%、0%であった。従って、浄水場に近い程、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の発症が高くなることが示唆された。花粉症とぜんそくにおいても同様な傾向がみられた。以上より、動物実験においては、塩素の経口摂取により抗原特異的T細胞の反応が有意に高くなること、また調査研究においては、浄水場に近く、水道水中の塩素濃度が高くなるに従って、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の発症率が高い傾向が示された。
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機能性食品と薬理栄養 Vol.4, No.6
ページ: 373-380
The Journal of Immunology Vol.180,No.6
ページ: 4000-4010