生活習慣病の主要な危険因子のひとつは疑いもなく食事である。また、生活習慣病に血栓形成が深い関わりをもつことから、適切な食事による血栓の予防は生活習慣病の予防にとっても有益であろうと考えられる。 私はこれまで、「食事による血栓症予防」というテーマのもと、種々の血栓予防食品を報告してきた。中でも最近、同じ脂肪酸組成をもつトリアシルグリセロール(TAG)とジアシルグリセロール(DAG)を2ヶ月間マウスに摂取させ、血栓形成傾向、動脈硬化形成等に及ぼす影響を検討し、DAG摂取が血漿総コレステロール値、中性脂肪値の上昇抑制ならびに、血栓形成傾向、動脈硬化形成を有意に抑制することを明らかにした。Virchowの定理以来、血栓形成には血球成分・血流・血管壁の3つの因子が関与していることが知られている。このことからDAGは、これらのいずれかに影響を及ぼした結果、抗血栓作用を示していることが考えられる。そこで今回私は、DAGの抗血栓作用メカニズムの一端を、我々がこれまで確立してきた生理学的手法(ずり惹起血小板反応性測定法【ヘモスタトメトリー法】ならびに血管内皮依存性血管拡張反応測定法【FMV法】)を用いて明らかにすることを目的とした 今年度においては、DAGが血小板反応性・凝固能・血管内皮依存性拡張反応・形態的動脈硬化度に及ぼす影響について検討し、DAGの抗血栓性作用が血管内皮機能の保護に起因することを明らかにした。また、本成績を学術論文として専門誌に発表した。次年度については、DAGが血中脂質分画・血中NOx量・大動脈中BH4量に及ぼす影響を明らかにし、DAGの血管内皮機能保護作用メカニズムの一端を明らかにしたいと考えている。
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