研究課題
小腸は生体において外界と接触する最も広い領域を有する器官である。その領域を形成する上皮は単層で、終末消化と吸収に携わる吸収上皮細胞が大半を占め、その表面に存在する微絨毛はさらに表面積を増大し、栄養素の吸収を効率的に進めている。その一方で、食物以外の異物にも接触する可能性が高いため、粘膜表面を粘液で覆って保護すると同時に、独自の局所免疫系である消化管付属リンパ組織(GALT)を発達させ、異物の侵入を防ぐ機構を持つ。小腸の消化吸収機構と防御機構の破綻によって引き起こされる疾患を予防する上で、発達段階における小腸の形態、消化吸収機構ならびに防御機構等に関するより詳細な基礎的情報を知る必要があると考え、今年度は(1)経時的および部位的検索および(2)トレーサー投与実験を行った。(1)経時的および部位的検索;新生児期から乳飲期、離乳期Wistar系ラット(生後0日齢から生後21日齢)の小腸(十二指腸から回腸末端部)を採取し、立体構築学的、超微形態学的検索を行った。その結果、離乳期を境に小腸の絨毛の形態および吸収上皮細胞の形態が変化した。また、小腸の部位によって、絨毛の形態および吸収上皮細胞の形態に差異が見られた。いずれの時期においても、小腸の部位による絨毛の形態の差異は見られたものの、吸収上皮細胞の形態の差異は離乳期を境にあまり明確でなくなった。(2)トレーサー投与実験;新生児期から乳飲期、離乳期Wistar系ラット(生後0日齢から生後21日齢)の小腸管腔内に高分子物質のトレーサーを投与し、高分子物質の消化・吸収機構について、生後0日齢から生後21日齢まで経時的、かつ小腸上部から下部まで部位的に細胞化学的検索を行った。離乳前の上部小腸吸収上皮においては、高分子物質のエンドサイトーシス、トランスサイトーシスが見られた。下部小腸吸収上皮細胞においては活発なエンドサイトーシスが見られたが、離乳後では上部小腸においても、下部小腸においても、高分子物質のエンドサイトーシスは見られなくなった。
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Medical Molecular Morphology 40(in press)
Hypertens Res 29
ページ: 169-178