昨年度に続き、新生児期から成熟期までの正常な小腸の性状について詳細に知る目的で、次の(1)〜(3)に関して、主に形態学的、免疫組織化学的方法を用いて検索を行った。 1 終末消化酵素(二糖類分解酵素、ペプチダーゼ)の局在部位について 2 トランスポーター(グルコーストランスポーター)の局在部位について 3 杯細胞の分布について 離乳期を境に、小腸の絨毛および吸収上皮細胞の形態が変化すること、及び吸収上皮紺胞における高分子物質の消化吸収機構が変化することについては、昨年度既に報告を行っている。離乳過程におけるそれらの変化に伴い、吸収上皮細胞の頂部細胞膜(微絨毛膜)表面に存在する二糖類やペプチドを消化する終末消化酵素(β-ガラグトシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、アミペプチダーゼ)の局在部位が変化し、グルコースの輸送に関与するトランスポーター(GLUT2、SGLT1)、フルクトースの輸送に関与するトランスポーター(GLUT5)についても、局在部位の変化が見られた。特に、回腸においては、それらの変化が空腸より顕著であった。このことは新生児期及び乳飲期には母乳中の栄養分を高分子のまま細胞内に取り込み、発達した巨大ライソゾーム内で消化する機構が存在するが、離乳期を境にそれらの機構が消失することと密接に関連していると思われる。 杯細胞は小腸上皮を構成する細胞の1つで、粘液を分泌し、上皮の保護などに関与する。その杯細胞の分布について検索を行った結果、新生児期、乳飲期では、空腸、回腸共に、吸収上皮細胞に混じって点在したが、離乳が進むにつれ、上皮に占める杯細胞の割合が増加し、それは特に回腸で顕著であった。 離乳期において、吸収上皮細胞の膜系の変化、終末消化酵素ならびにトランスポーターの局在部位の変化、さらに杯細胞(粘液)の増加によって、食形態の変化に対応していることが考えられる。
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