これまでに、離乳期を境に、小腸の絨毛および吸収上皮細胞の形態が変化すること、吸収上皮細胞における高分子物質の消化吸収機構が変化すること、離乳過程におけるそれらの変化に伴って単吸収上皮細胞の頂部細胞膜(微絨毛膜)表面に存在する二糖類やペプチドを消化する終末消化酵素(β-ガラクトシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ)の局在が変化し、グルコースの輸送に関与するトランスポーター(GLUT2、SGLT1)、フルクトースの輸送に関与するトランスポーター(GLUT5)についても、局在の変化が見られること、さらに時期および小腸の部位によって杯細胞の分布に差異があることを報告している。 今年度は防御機構に関して詳細に知る目的で、高い免疫応答を示し、アレルギーモデル動物として広く用いられているBrown Norwayラット(BNラット)を用いて、形態学的、免疫組織化学的、立体構築学的手法により、Wistar系ラットとの比較を行った。BNラットを用いて検索した結果、正常時において小腸の立体構築学的に顕著な差異は見られなかったが、組織学的には杯細胞の粘液および分泌状態にWistar系ラット小腸と比較して差が認められた。オブアルブミンを連続して経口摂取させると、Wistar系ラットでは正常と比較して顕著な差は見られなかったものの、BNラットにおいては単絨毛先端部の上皮に障害が認められ、オブアルブミンを経口投与後、試料を採取して抗体を用いて免疫組織化学的に検出すると、上皮細胞内、固有層内にオブアルブミンの反応産物が認められた。以上のことから、小腸の防御機構の1つである粘液分泌低下が上皮の傷害に関連し、高分子物質の通過を容易にする可能性が示唆された。
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