日本人の死因の第一位は「がん」であり、発がん予防・健康増進という観点から安全性が高い機能性食品の開発が求められている。本研究では、発がんの初期段階である遺伝子突然変異の誘発過程に注目し、その中でも突然変異誘発に関与するといわれているYファミリーDNAポリメラーゼに着目し、その活性を特異的に阻害できる物質を天然・食品抽出物からスクリーニングすることを目的に実験を行っている。 食品・天然物由来の抽出物を網羅的且っ迅速的にスクリーニングするため、Salmonella typhimurium TA1538株に大腸菌のYファミリーDNAポリメラーゼの一つであるdinB遺伝子をもっpYG768プラスミドを導入した株を使用し、遺伝毒性試験を行った。この試験株は、YファミリーDNAポリメラーゼの発現によって、多環芳香族炭化水素に対して高い感受性を示す。この株を使用して104種類の抽出物についてスクリーニング実験を行った。その結果、32種類の抽出物において高い感受性が示されたため、それら抽出物について、単離精製したYファミリーDNAポリメラーゼを用い、試験管内でのDNA合成阻害実験を行った。その結果、ビワ葉エキス粉末においてDNAポリメラーゼ活性を阻害する効果が見られたが、YファミリーDNAポリメラーゼに特異的なものではなかった。その他の抽出物については、現在解析中である。 また、出芽酵母Saccharomyees cerevisiae(S.cerevisiae)のテスター用に改良された株を用いて、酵母中で起こる突然変異についてこれら抽出物がどのような影響を及ぼすか現在検討中である。
|