本研究は、地域の人材や施設の連携による教育に着目する研究代表者の一連の研究に位置づいており、次の三つの研究活動から構想されている。 1.教員養成学部においても取り組みやすい骨格標本、毛皮標本作成方法の開発。 2.標本とその作成法の学部・大学院授業への導入。 3.このような取り組みとその成果を広く地域社会に紹介する研修会・ワークショップの実施。 最終年度に当たる本年度は、これまでに構築した協力関係・作成方法の上で、それぞれの研究活動について、以下の目標を設定した。 1.について、作成可能な骨格標本サイズの拡大と毛皮標本の試作。 2.について、研究期間終了後の継続を意識した、標本作成を入れた大学院授業の改善。 3.について、本研究の成果を紹介する研修会の継続開催。 これらの目標について本年度の成果は以下のとおりであった。 1.について、昨年度までのウサギ程度の大きさの骨格標本作成から、ニホンザル程度の大きさの動物まで処理できるよう、方法と道具を見直し、ニホンザルの骨格標本を作製した。毛皮標本は、処理用の道具・薬品などを準備することができたが、試作まではいたらなかった。 2.について、動物園での標本の借り出しにはじまり、標本作成法のレビュー、作成作業の実習、授業実践化への考察までを含めた授業を実施した。昨年度よりも短時間での授業にするよう改善した。 3.について、8月に研修会を企画し、本研究で考案した骨格標本作成法と動物園の骨格標本を用いた授業の2年後の影響調査を紹介した。また科学教育学会年会にて自主企画課題研究を企画し、各地で行われている動物園での研修会の様子や課題を相互に紹介し、議論を行った。 これらの成果により、授業を通じての骨格標本作成が可能になった。これにより動物園に標本が蓄積し、その扱いに慣れた教員が増え、動物学教育の地域システムの充実に寄与することが期待できる。
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