研究課題
本年度は、まず理論と実践を有機的に結びつける方法論であるデザインリサーチの方法論について、多くの文献を収集し、その総合的検討を行った。この方法論では、研究者と教師が協働して、授業の指導案を含めて教室環境を総合的にデザインし、実践にうつし、実践の反省と再デザイン化を図りながら、即時的および回顧的な分析のプロセスの中から、科学的知見を抽出するというプロセスを踏む。従って、従来行われてきたような学問的な知見を学校現場で検証する「理論検証型」の研究とは違い、デザインリサーチの方法論は、実践の開発をベースにして、そこからボトムアップ的に理論を抽出する「理論構築型」の研究方法論であり、その意味で、理論-実践の結びつきは強固なものとなる。この成果は、全国数学教育学会、および日本数学教育学会におけるフォーラムの中で発表を行った。次に、算数から数学への移行において、数と計算・数と式の分野においては、式の認識を高めることが重要になるという観点から、中学1年の正負の数の単元において開発した式作りの学習に関する授業を分析し、そこでの生徒達の代数へ向けた式の見方の発達の様相を明らかにした。分析における中心的な理論的視点として、記号論的連鎖の考え方をとりあげ、ある式表現に対して生徒が作り出す式、生徒による式の解釈、およびそれらの間の関係性の視点から生徒の学習過程を見たとき、生徒の式の見方の発達の様相が4つの記号過程として記述できることが分かった。成果は、数学教育心理国際学会の中で発表した。この理論的枠組みは、小学校高学年でのデザインリサーチを実践し、算数から数学への思考の高まりのプロセスを明らかにしていく為の基礎になりうると考えられる。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Proceedings of the 30th Conference of the International Group for the Psychology of Mathematics Education 4
ページ: 257-264
日本数学教育学会,第39回数学教育論文発表会論文集
ページ: 23-24