産学連携の組織を整備することにより、外部資金の導入を積極的に実施している大学も増加してきている。ところが、事業化体制についてみると、状況がよくなっているとは考えられない。東海地域においても100以上の機関が事業化支援を掲げている。しかし、大学発ベンチャーを初めとする最先端技術を用いた事業化と、SOHOを初めとする小規模な事業化と同じようなスタイルで支援しても無理であることは明らかである。このような高度な事業化に適応できる人材が必要である中、名古屋大学を始めとする8機関(大学)で、科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業が始まった。名古屋大学ではノンリサーチ・キャリアパスへの支援事業を行っており、博士課程の学生やポスドクが産学連携や国際協力の分野に就職する支援をしている。その中で、産学連携分野で活動しているとされている機関にニーズ調査を実施した。母数は347で、すでに博士を雇用しているのは、27.4%であった。ノンリサーチ分野で専門知識や経験があったほうがよい以上は、63.1%あった。必要とされる能力は、仕事への意欲とコミュニケーション力を希望している機関が多く見られた。これは博士の力は、就職するためには必要条件ではなく、あったら良いが無くてもいい。博士には、その経験よりも意欲とコミュニケーション力が求められることが判った。このニーズを踏まえて、MBAやMOTなどの経営マネジメントについても求められていないことも確認できた。 さらに、バイオ分野では、基礎研究成果と事業化の距離が近いと言われており、多様な知識が必要になってくる。それらの知識のスキル達成度の評価として、客観的な評価を導入することは易しくないと思われるので、その評価についても検討を続けることが必要である。
|