研究概要 |
平成18年度は、これまでに行ってきた研究を基盤に、理科教育においてその育成が求められる科学的思考力について、理論的枠組みを検討した。また、理科において実験レポートの指導を行うことの意義について認知的側面から検討を行うとともに、認知的側面の育成を考慮した教授・学習プログラムの基礎を構築するための基礎的な調査を行った。その概要を以下に示す。 (1)科学的思考力 理科教育において科学的思考力を育成することの必要性について述べられた文献は、既に1950年代においてみられる(中野,1953など)。科学的思考力を育成することの目的は、時代によってその趣旨が若干異なるものの、科学的思考力には創造性と論理性が含まれる点は普遍的である。 また、科学的思考の年齢的発達過程による段階として、「アニミズム的思考」「現象論的思考」「論理的思考」「創造的思考」などが提案されている。 (2)実験レポートと科学的思考力 Vygotskyが「ことばの自覚性の発達に重要な意義があるのは、それが概念の体型性の発達と密接に結びついている点にある。」と述べているように、ことばの自覚的使用は概念の体系生を発達させることと結びついている。このため、観察・実験活動のまとめとしてレポートを作成させることは、科学的概念の理解・深化にも寄与できると考えられる。 (3)中学生の実験レポートの実態 実験レポートの作成について意図的な指導をあまり受けていない中学生は、(1)論理性に乏しい実験レポートしか書くことができない、(2)結果と考察の区別が曖昧である、ことが明らかとなった。
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