研究概要 |
本研究は、これまで明らかにされていなかったロボットコンテスト(以下、ロボコン)における興味関心以外の学習効果を明らかにすることを目的としている。平成20年度は、平成18年度、および平成19年度に引き続き、制御情報工学科3年生に対してロボコンの学習効果を測定する実験を行なった。平成18年度の実験で、学習者の観察を行なう際の情報を抽出する数の変化を測定し、優位な結果を得ていた。平成19年度の実験では、平成19年度の情報を抽出する数の変化を測定する実験に加えて、被験者に調整作業の記録を行なってもらい、成績の変化と作業の関係を比較検討した。その結果、生成が上昇した学習者ほど作業量が多い傾向にあることがわかった(相関係数0.239)。しかし、情報を抽出する数の変化を測定する手法は独自のものを使用しており、評価方法に対する検証が不十分であった。 そこで、平成20年度は、創造力開発手法のひとつである「属性列挙法」を用いて、学習者の観察を行なう際の情報を抽出する数の変化を測定した。「属性列挙法」は、対象を細かな属性に分けて、アイデアを出し易くする手法である。その過程で、対象の属性を捉える必要があり、観察が行なわれる。従来の方法に比べて、眼に見えないものが観察できなくなる反面、対象の属性を正確に捉える作業を行なうことができる。評価の結果、被験者の観察を行なう際の情報を抽出する数に優位な成績の上昇が見られた(事前テストの平均=7.48, 事後テストの平均=13.05, 両側検定 : t(41)=1.59e-15, p<0.01)。以上により、「属性列挙法」を用いて学習者の観察を行なう際の情報を抽出する数の変化を測定できることがわかった。 3年間の研究成果として、ロボットコンテストを実施することにより、学習者の観察力の変化を評価することが可能であることがわかった。また、実際の作業と、観察力の変化には、ある程度の相関があることもわかった。しかし、現時点では点数そのものに意味を持たせるまでには達していない。今後は、精度がよい評価を行なえるよう、研究を続けたい。
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