高等学校を対象に、森林に関する教育の実態調査をもとに環境教育と林業教育を統合した新たな森林環境教育のあり方について検討することを目的とした研究を実施した。調査対象とした高校は、林業関連学科、林業以外の農業系専門学科、森林に関係した系列を持つ総合学科高校、自然・環境系専門学科やコース、普通科で森林に関係した授業を実施しているとした。学校の選定および動向調査には、活動事例集などの文献資料、HPを参考にした。調査は、担当教員への聞きとり調査とした。 森林に関する教育の実施体制は、実施科目として、農業系の専門科目や、自然・環境関連の理数系専門科目、総合的な学習の時間や特別活動などがあり、学校設定科目も設置され、専門学科以外でも実施されていた。森林・林業関連学科の状況は、教育目標により5つに類型化でき、卒業生の進路先や学校の立地環境などにより教育の多様化が進んでいる状況が明らかになった。森林・林業関連学科から改組した学科では、林業教育に野外教育や環境教育の要素を取り入れた実践が行われており、文部科学省の「生きる力」に共通する面があると考えられた。しかし農業系の専門高校では、環境を含むより広い森林・林業教育を実践しながらも、専門科目減少や選択者の減少が進み、森林・林業教育の縮小が起こっている現状が明らかになった。 以上より、高校でこれまでに実践されている森林環境教育のあり方を整理すると、専門的な林業関連学科の他、普通高校、総合学科高校では「総合的な学習の時間」や学校設定科目、学校行事での取り組みに地域の資源(指導者、フィールド)を活用することで、環境教育や野外教育の要素を取り入れた森林環境教育の展開の可能性があることが示された。
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