本研究は、熟練者の視線情報を活用し、既存のビデオ教材などと比較してより有効な技能の継承を支援するシステムの設計と開発を行うことを目的としている。初年度は、視線を利用することのできる新たな技能継承支援システムのプロトタイプの設計と開発、システムを利用した教材の作成を行った。昨年度は、視線計測部の改良、教材の記述形式の改良、ロープワーク(ロープの結び方)を対象にした教材作成のためのデータ取りを行った。 本年度は、主として、熟練技能を記録したビデオにアノテーションを付加する際に必要となる熟練者からの知識獲得について研究を行った。下記のような手順により、熟練者を長時間拘束することなしに、知識を獲得する手法について検討した。(1)熟練者が行っている技能のビデオを撮影する。(2)非熟練者が、そのビデオを再生、巻き戻しをしながらその技能をチェックし、その技能をまねして実践してみる。(3)非熟練者のビデオの操作ログを解析し、何度も確認している場所を、学習困難な箇所として推定する。(4)推定された学習困難な箇所に絞って、熟練者にインタビューを行いアドバイス・ノウハウの情報を獲得する。 被験者10人の実験により、非熟練者の操作ログ分析から、非熟練者が習得困難な箇所をある程度推定できることが分かった。これにより、その箇所に絞って熟練者にインタビューすることが可能となり、熟練者の拘束時間を減らせるなど効率的に熟練知識の獲得が行えるようになると考えられる。さらに、熟練者が非熟練者が間違いそうだと考えつかないような場所も発見できることが分かった。
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