本研究は小学校の児童が授業を通じてどのように学習方略を獲得していくのかを明らかにすることを目的としたものである。 本年度は、小学校6年生を対象として昨年度収集したデータを用いて、どのような方略の利用について教師が子どもたちの様子を的確に把握しているのか、またどのような子どもについて教師は把握しやすいのかを分析した。その過程において、子どもたち自身が自らの行動についてはっきりとした認知を行いづらい項目の存在が明らかになった。また、教師自身が重要だと認識している方略は、授業場面を通じて子どもたちにも伝わりやすいと同時に、教師が子どもたちの行動を評価する際にもはっきりとした評価をしやすいのに対し、教師自身がその重要度をはっきりと認識していない項目については、子どもたちの行動をとらえる際にも判断に迷うということが明らかになった。また、年度の最後となる時点において子どもたちに方略がどのように伝わっているのかについて検討するために、小学校6年生の国語科における年間最後の単元を用いた学習の様子に関する調査を行った。約1ケ月にわたり1つのクラスの子どもたちが一単元の学習を通じてどのように変化していくのかを観察し、ビデオで記録するとともに、教師が重要だと思っている方略や実際に子どもたちが行っている方略について、短期的な有効性の認知、長期的な有効性の認知、実際の使用状況という観点から質問紙調査を行った。今後はこれらのお互いの関係について分析を進め、子どもたちが方略を獲得していく上で影響を与えている要因について探る予定である。さらに、収集したビデオ記録や観察記録に残された授業中の子どもたちの実際の様子と質問紙調査の結果との対応についても検討しようと考えている。
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