本年度は子どもたちの話し合いを中心とした授業において、自らの学びを他者に伝えること、また他の児童の学びの成果をクラスで共有することに対してどのように取り組んでいるのか、またそれらを達成するために教師がどのような支援を行っているのかについて探ることを目的として研究を行った。そこで、小学校3年生および6年生の国語科の授業を対象とし、授業観察および教師へのインタビューから得られたデータをもとに検討を行った。 その結果、話し合い場面において積極的に発言するのが難しい子どもたちの存在が明らかになり、話し合いを広げていくためにはそのような子どもたちからの表現を引き出すための工夫が必要であることがわかった。そのために発言すること以外にも表現する方法と機会を確保することはより多くの子どもたちの学びが共有される機会となると示唆された。また、教師が授業時間内外を問わず子どもたちの意見を聞きだすための声かけを行っていたり、代弁するように黒板への板書を通じて表現したりするといった働きかけを行っており、挙手や発言といった外からわかりやすい参加以外の方法で授業に参加している子どもたちの学習成果を教室に伝える役割を果たしているのではないかと考えられた。このような働きかけは他者の意見を聴く、じっくり考えるといった静かながらも積極的な授業参加をしている子どもたちの存在に教師が気づき、そのような参加のあり方を認めようとする教師に意識によって行われていると考えられ、教室の中に存在する多様な子どもたちの学びを助けていくために必要なことだといえるだろう。
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