英文の論文や専門書を翻訳しつつ輪読をするという学習スタイルは、英語論文の読解トレーニングだけでなく、専門領域の最新の知識や概念を獲得できるため、大学院や専門科目において特に少人数ゼミナールなどにおいて広く実践されている。英文読解とその輸読は、翻訳することに主眼があるわけではなく、その学問的内容を理解することにある。本研究は、論文や専門書の翻訳・輪読を、共有のウェブ画面で行うことにより、学習と内容理解の促進を図るe-Learningサイトを構築し、それを実践的に評価する研究である。 このような翻訳を通じた専門科目学習のために以下の4つの機能を実装した。1.「重要文を自然言語的処理によって強調表示させ、自動抄録を生成する機能」、2.「ゼミにおけるプレゼンテーションを支援する機能」、3.「チャットの可視化機能」、4.「英文の構文をよりわかりやすく可視化する機能」である。 実装されたシステムを被験者により評価した結果、翻訳やゼミの運営がしやすい、実際に被験者によって得られる翻訳文が改善されるなどという結果を得た。一方、以下の4つの問題点・必要性が明らかになった。1.「重要文を自然言語的処理によって強調表示させ、自動抄録を生成する機能」、2.「英文の構文をよりわかりやすく可視化する機能、3.Wordなどによる英語の原文をよりスムーズにシステムに入力する機能の改善」、4.「完成された訳文をWORDなどへExportする機能の改善」である。特に、構文解析の結果を被験者に提示してもそれがあまりに専門的すぎ、実際の学生には利用し難く、与えられた英文に対して、高校までに習ってきたSVOCの5文型に基づく構文表示機能が強く望まれ、これを可視化するための機能が必要であることがわかった。今後は、自然言語の専門的内容を表記するのではなく、より学生の理解に適した表記を検討する必要がある。
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