研究概要 |
本研究は, 理工系学生を対象とした, 論文執筆のための教育システムの構築を目的とする. 論理的な思考が必要なプログラムは書けるのに論理的な文章を書くことは苦手である, という理工系学生は多い。そこで, プログラミングの技術を論文執筆に活かすために, 文書をクラス図のような形に可視化する推敲システムを提案する. 可視化により, 理工系学生にとって文章の構造が理解しやすくなると考える。本システムにより文書を客観的に解析することで, 自分が書いた文章の不具合を認識させ, 学生自身の文書作成能力の向上を図る仕組みである. 以上の研究目的を達成するため, 今年度は, 昨年度までに作成したシステムの改良および評価実験を行った. まず大きな改良点として, 図を「文単位の可視化」と「全体の可視化」の2種類に分けたことが挙げられる. 文単位の可視化の目的は「修飾-被修飾関係が意図どおりに解釈されない可能性のある部分」と「修飾-被修飾関係にある語が離れている箇所」を執筆者に認識させ, 適切な修正に導くことである. 全体の可視化の目的は, 論理的な飛躍がある場合, それを執筆者に認識させ, 適切な修正に導くことである. また, 別途開発した「論文のルールに則って書かれていない文」「意図が伝わりにくい文」を検出する機構を組み込むことにより, 一層有意義なシステムとなった. 評価実験については, 実際に学生が論文を書く場面において本システムを利用してもらい, 利用前後の論文に対し第三者による評価を行った. その結果, 本システムの有効性が確認できた一方, システムをより有効に利用するためには慣れが必要であることも観察された. そこで, 今回の実験の被験者には引き続きシステムを利用してもらい, 効果を追跡調査していく予定である. また, システムの利用方法についてのマニュアルを整備すれば, より一層の効果を期待できる
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