研究概要 |
学生による授業評価はいまやほとんどの大学で実施されているが,その結果が十分に活用されているかどうかは定かではない.「自己点検の義務化」や「認証評価制度」などへの対応という側面が強く,その大きな負担に比して「授業評価実施後の結果の活用」は十分ではないのではないかという疑念が生じている.本年度は授業評価の結果の活用に関して,現状の把握を行うという目的のため質問紙調査およびインタビューを行った.質問紙調査は,2006年8月に行われた授業評価に関するシンポジウム(対象:高等教育機関の教職員)出席者に対して実施したものである.その結果から,授業評価実施は教育の改善に有効であるととらえられている(84%)が,現状には満足していない(61%)という結果が得られた.現状に満足できない主な理由としては,(1)学生から信頼のおけるデータが得られるかどうかが不安,(2)結果活用が教員個人の力量に依存,(3)教育改善に活用できるだけの情報が少ない,(4)結果返却その後の改善にまで踏み込んだシステムの未整備,などが挙げられた.また,大学へのインタビュー調査を行ったところ,「授業評価のその後」までフォローする人も資金も,方法に関する知識も不足し,その結果として「やりっぱなし」になっていることが事例として明らかとなった.海外の事例についても調査を行ったが,やはり「結果の活用」は内外を問わず多くの機関の抱える共通の課題であることが明らかとなった.本調査の結果から,(1)授業評価の意義が学生や教員にどのように周知されているのか,(2)授業評価後の活用の体制はどうなっているのか,という点について,授業評価調査票原票およびその評価結果に対する教員の提出書面等の調査を含めた調査を計画することを決定した.これは次年度に実施する予定である.
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