研究概要 |
平成19年度の研究では,ドイツのHeinrich Rubens (1865-9122)の熱輻射実験を中心に分析を行った. 1880年代末〜1890年代前半において,Rubensは,遠赤外部領域におけるMaxwell理論の実証のため,赤外部熱輻射線をとらえる測定器とその設定の改良・開発に取り組んだ.Rubensは,当初,1885年のAngstromの研究を参考にしてボロメーターを製作した.その後,検出素子の材質や形状の改良を進め,アメリカ人研究者Snowの研究を参考にして,1892-1893年にDu Boisとともに,ボロメーターの主要部ガルヴァノメーターを製作した.実験設定については,1892年当時,分散測定の一般的な回折格子を使うLangleyの方法を選択せず,Rubensは独自の干渉平行板を利用する方法を敢えて採用したが,翌年の実験以降,回折格子の方法へ向かった.最終的にRubensは熱輻射源-回折格子-プリズム-ボロメーターという実験設定に選んだ. 1890年代後半〜1900年において,Rubensの測定器は,従来のボロメーターに加え,アメリカ人研究者Nicholsの開発したラジオメーター,Rubens自ら新たに開発した熱電対列だった.Rubensは従来の熱電対列の欠点を補い,他の測定器よりも長波長輻射線測定に利点をもつコンスタンタン・鉄の熱電対列を開発し,それを長波長研究に適用した.1899年になり,Rubensは,熱輻射源-残留線のための反射物質-熱電対列という長波長向け実験設定を確立した.この実験設定は,1900年のWien法則やPlanck法則の検証に採用された. 1880年代末〜1900年のRubensの熱輻射研究の特徴は,機器・実験設定の多彩な採用に加え,アメリカ人研究者との積極的な共同研究にあった.
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