平成19年度は、北海道中央部擦文時代(恵庭市柏木川4遺跡)の焼失した竪穴住居址(以下、焼失住居址と表記)から出土した炭化材の樹種同定、北海道南部縄文時代中期(函館市桔梗2遺跡)の焼失住居址から出土した炭化材の樹種同定をおこない、各焼失住居址に利用された樹種の構成を明らかにした。また、分析対象遺跡が立地する地形の形成過程や、花粉分析結果の収集と検討、建築学的な検討をおこなった。上記の一部については内容をまとめ、発表した。 1、柏木川4遺跡では焼失住居址(2基)の炭化材を樹種同定した結果、コナラ節を主体に、ヤナギ属、トネリコ属が存在した。これらは、垂木と考えられる炭化材や、組み合って発見された炭化材のため、擦文時代の上屋構築材にコナラ節が利用されることと、同じ樹種を組み合わせて上屋が構築されたとわかった。周辺遺跡の花粉分析ではコナラ属の花粉が主体であることから、一部では周辺植生からの木材選択が考えられる。 2、桔梗2遺跡では縄文時代中期の焼失住居址(2基)の炭化材を樹種同定した結果、ほとんどがクリであった。昨年明らかになった、函館市臼尻C遺跡(縄文時代後期)の分析結果と比較すると、クリを主体とすることは同じであるが、後期にカエデ属、ブナなどが上屋構築材に利用される点で異なる。周辺遺跡の花粉分析結果では縄文時代前期〜晩期にクリ属・コナラ属が多く産出されている。クリが焼失住居址の樹種同定で多かったのは、周辺植生から木材を選択したからと考える。 3、北海道東部の常呂川河口遺跡の周辺には、標高30m〜80mの丘陵および台地、標高約3mの自然堤防、沖積面が存在し、遺跡は自然堤防(約2500年前に形成)に位置する。遺跡周辺の花粉分析結果では、約3700年前〜1700年前にモミ属などとコナラ亜属などとの針広混交林が存在したようである。昨年明らかになった竪穴住居での利用樹種の構成は、周辺地形の植生が反映されていると考えられる。
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